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婦人科専門外来で扱う病状・病気


女性と冷え症・・・

 女性特有の健康障害として、冷え症、頭痛、月経痛の三つをあげることができます。これらは日常的に経験することであり、体質的な性(たち)と考え、我慢するものだと考えている女性が多いと思います。しかし、日常生活に支障をきたすようになれば病的と考えて治療の対象になります。また、その発症に心理・ストレス、生活習慣、性格なども関与することから、薬物療法とともに保健指導を合わせて行なうことで日常生活の質を向上できます。今回は、特に冷え症に関して述べます。

◆冷え症の頻度◆
 冷えを訴える人は圧倒的に女性が多く、私たちの調査でも、更年期女性では58%、若年女性では50%が冷え症であると答えています。ただし、治療の対象になるのはこの−部です。

  ◆冷え症の病態◆
 冷え症の原因として基礎疾患が存在することがあります。貧血、低血圧、自律神経失調、甲状腺機能低下などで、それぞれの疾患に対する治療が必要です。更年期に見られる冷え症は女性ホルモンの急激な低下と、それに伴う自律神経失調状態が原因であることが多く、さらに、この時期には心理・ストレス因子が冷え症の程度を強くすることがあります。若年女性の冷え症には、体質とともにダイエット、簡易食品、ストレス、うつ、薄着、夜型生活、日光不足などの生活環境因子も関与することがあります。


◆冷え症の診断◆
  冷え症は主に自覚症状から診断します。「冷え症の診断基準」を表に示します。重要項目3項目と参考項目5項目の合計8項目からなり、重要項目2項目以上、重要項目1項目に参考項目2項目以上、あるいは参考項目4項目以上を満たすものを冷え症とします。私の外来では、手指や足指の温度を精密な機械で測定することにより客観的に冷え症を捉えています。手指の温度が30度以下、足指の温度が26度以下の場合、冷えを訴えることが多くなります。

◆冷え症の治療◆
 薬物療法としては漢方薬が中心です。全身の気・血・水のバランスより冷え症を捉え、漢方薬を選択します。「気」では気虚といって気がうつろな場合(やる気がしない、疲れやすい、気がめいる)、「血」では貧血や高脂血などの場合、「水」では身体に水分が貯留して身体が冷える場合、それぞれのタイプに応じて有効性の高い漢方薬を選びます。保健指導では生活の歪みやストレスを正しく評価し、漢方療法と合わせて、心身の安定をはかることが肝要です。
 冷え症の治療は冷えの改善のみならず、その他の不定愁訴の改善にもつながることから、全身の健康向上に重要といえます。



冷え症の診断基準

重要項目
  1. 他の多くの人に比べて、”寒がり”の性分だと思う。
  2. 腰や手足、あるいは身体の一部に冷えがあってつらい。
  3. 冬になると冷えるので電気毛布や電気敷布、あるいはカイロなどをいつも用いるようにしている。

参考項目
  1. 身体全体が冷えてつらいことがある。
  2. 足が冷えるので夏でも厚いクツ下をはくようにしている。
  3. 冷房のきいているところは体が冷えてつらい。
  4. 他の多くの人に比べてかなり厚着するほうだと思う。
  5. 手足が他の多くの人より冷たいほうだと思う。

(林産婦人科 婦人科専門外来担当医)

 

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